第87回全日本自転車競技選手権大会ロード・レース
[上:17位でフィニッシュした鈴木龍選手が最上位と厳しい結果に終わった]
[下:最終周回を独走した山本元喜がエリートでは初となるチャンピオンに輝いた]
©️Nobumichi KOMORI/HATTRICK COMPANY
6月24日(日)に、全日本自転車競技選手権大会ロード・レースが開催されました。
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このレースに、宇都宮ブリッツェンから以下の9名がエントリー。
増田成幸
鈴木譲
阿部嵩之
飯野智行
鈴木龍馬渡伸弥
雨澤毅明
小野寺玲
岡篤志
ロードレースの日本チャンピオンを決める「全日本自転車競技選手権大会ロード・レース」が、島根県益田市に設定された1周14.2kmの行動特設周回コースを15周回する213.0kmで開催され、1周回目にできた逃げ集団がそのまま逃げ切る形となり、最後は残り3周回で抜け出したKINAN Cycling Teamの山本元喜が最後は独走となって優勝。男子エリートでは嬉しい全日本選手権初優勝を飾り、栄光のナショナルチャンピオンジャージに袖を通しました。
宇都宮ブリッツェンは、序盤にできた逃げ集団に阿部、鈴木龍、小野寺、岡の4選手を送り込んでレースを展開。逃げに乗った各チームのスプリントエースが次々と脱落していく中で鈴木龍、小野寺の両選手がしっかり残って勝機をグッと手繰り寄せる展開となりましたが、最終局面での2名の飛び出しに誰も反応できず。また、追走集団に入った小野寺選手も遅れてしまい、最終的に鈴木龍選手の17位が最高位でレースを終えました。
ロードレーサーであれば誰もが一度は夢見るナショナルチャンピオンジャージ。その着用者を決める年に一度のビッグレース、全日本選手権ロードレース男子エリートの日がやってきました。
今年は、UCIワールドチームに所属する別府史之選手(トレック・セガフレード)と新城幸也選手(バーレーン・メリダ)の2名がそろって不出場。さらにプロコンチネンタルチームのNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニは吉田隼人選手のみが出場ということで、普段からしのぎを削り合う国内コンチネンタルチーム勢同士の争いとなることが予想されます。
レースの舞台となる島根県益田市に設定された1周14.2kmの公道特設周回コースは、2013年から開催されている若手の登竜門的レース「益田チャレンジャーズステージ」でも使用されているコースで、逆回りではあったものの過去にはジュニアの全日本選手権も開催されたことがあるコースでもあります。
レイアウトは大まかに、スタート・フィニッシュ地点を過ぎてすぐに始まる上り区間を経てアップダウン区間に入り、折り返してからはコーナーが多い下り基調が続くという難易度的には決して最高ランクではないものの、213kmと長距離かつ獲得標高は4,000mに迫るということも手伝って、サバイバルな展開になることも予想されます。
増田、馬渡の2選手が欠場となり7名が出走となった宇都宮ブリッツェンは、好調を維持する鈴木譲選手と雨澤選手を最終局面の勝負要員とし、2名を温存しながらレースを展開することを選択。前半にできる有力チームの選手を含む逃げには飯野選手と岡選手が中心となって対応し、中盤前後や有力選手を含む10名程度の逃げには鈴木龍選手も乗っていって対応。最終局面では雨澤選手が上り区間で勝負を仕掛け、集団の場合は鈴木譲選手でのスプリントというプランでレースに臨みました。
午前9時にスタートしたレースは、スタート直後の上り区間から積極的に動きを見せる展開となり、1周回目が完了する段階では29名と大所帯の逃げ集団が形成されることとなります。
さらに後方からは選手が次々に合流。最終的に、逃げは31名になります。
阿部、鈴木龍、小野寺、岡(宇都宮ブリッツェン)
平塚、小石、横塚、徳田(UKYO)
大久保、石橋、堀(BSサイクリング)
佐野、安原、田窪(マトリックス)
早川、阿曽、岡本(愛三工業)
秋田、黒枝(シマノレーシング)
山本、新城(キナンサイクリング)
吉田(NIPPO)
下島、吉田、樋口(那須ブラーゼン)
高岡(Roppongi)
中村、大東(イナーメ信濃山形)
金子(7-11)
清宮(竹芝レーシング)
井上(Magellan Systems)
豊田(WAKO’S)
↓
メイン集団
国内コンチネンタルチーム勢が複数人を送り込んだ逃げということもあり、集団はこの逃げを一旦容認。その後、レースはしばらく31名の逃げ集団とメイン集団という展開で進んでいきます。
宇都宮ブリッツェンとしても最多の4名を逃げに送り込んでおり、また、このまま逃げ切っても脚の残り具合で鈴木龍選手、小野寺選手、岡選手の誰でもスプリント勝負ができる状況とあり、有利な状況を手にしたと言える状況となります。
途中でクラブチーム勢4名の追走集団ができることもはあったものの、逃げ集団とメイン集団というレースの大枠は変わらず。タイム差だけが拡大することになり、8周回目に入った段階では9分10秒にまで拡大します。
逃げ集団
↓ 9分10秒
メイン集団
足切り時間の10分も見えてきそうなタイム差となったことで、メイン集団もいよいよペースアップを開始。シマノレーシングやブリヂストンサイクリングが中心となって集団の牽引するようになります。
レースも残り5周回となる11周回目を迎える前の段階になると、31名の逃げ集団からは樋口選手(那須ブラーゼン)が単独でアタックを仕掛けて先行する展開に。その吸収のために逃げ集団も活性化して、樋口選手(那須ブラーゼン)を吸収する頃には16名にまでブラッシュアップされる展開となります。
鈴木龍、小野寺、岡(宇都宮ブリッツェン)
平塚、小石(UKYO)
佐野(マトリックス)
大久保、石橋(BSサイクリング)
吉田(NIPPO)
早川、阿曽(愛三工業)
山本、新城(キナンサイクリング)
下島(那須ブラーゼン)
高岡(Roppongi)
井上(Magellan Systems)
↓
逃げ集団からこぼれた選手たち
↓
メイン集団
16名に絞られた逃げ集団では、残り3周回となる13周回目に入ると上り区間で小石選手(UKYO)と山本選手(キナンサイクリング)が先行する展開に。後方では4名の追走集団が形成される展開となります。
小石(UKYO)
山本(キナンサイクリング)
↓ 50秒
小野寺(宇都宮ブリッツェン)
佐野(マトリックス)
石橋(BSサイクリング)
新城(キナンサイクリング)
↓ 1分50秒
鈴木龍(宇都宮ブリッツェン)含む8名の追走
↓ 6分22秒
メイン集団
宇都宮ブリッツェンとしては追走集団に小野寺選手(宇都宮ブリッツェン)とともに鈴木龍選手(宇都宮ブリッツェン)が入りたかったところですが、入ることができず。一気に不利な状況に追い込まれてしまうことになります。
残り2周回となる14周回目に入ると、4名の追走集団から小野寺選手(宇都宮ブリッツェン)がドロップし、追走集団は3名に。この時点で、宇都宮ブリッツェンが勝利を手にできる可能性はグッと下がってしまうことになってしまいます。
その後、小野寺選手(宇都宮ブリッツェン)がドロップした追走集団は石橋選手(BSサイクリング)もドロップして2名になり、先行していた2名に合流。先頭は4名となります。
小石(UKYO)
佐野(マトリックス)
山本、新城(キナンサイクリング)
↓
小野寺(宇都宮ブリッツェン)
↓
後方集団
↓
メイン集団
4名なった先頭集団は、勝利に向けたアタック合戦となり、その中で小石選手(UKYO)がドロップ。先頭は佐野選手(マトリックスパワータグ)と山本選手、新城選手(ともにキナンサイクリング)という状況になります。
その後、アタックと合流を繰り返しながら、先頭の3名はついに最終周回へ。最終周回に入ると、上り区間で山本選手(キナンサイクリング)がアタックを仕掛けて先行。佐野選手(マトリックスパワータグ)も諦めずに追走を続けましたがタイム差は拡大していき、山本選手が独走でフィニッシュ。見事な勝利で、ナショナルチャンピオンジャージを獲得しました。
宇都宮ブリッツェンはレース終盤まで逃げ集団に複数人を送り込んで有利な状況キープしたものの、最終局面で力勝負になったところで綻びが出てしまい、勝負に絡むことができず。鈴木龍選手の17位が最高位という悔しい結果でレースを終えました。
清水監督コメント
「全日本選手権特有の珍しいレース展開の中、チームにとっていい形で後半戦に向けてつなげていたのですが、最終局面で思い通りに行かなかった部分は実力不足でした。10周年の節目に日本チャンピオンジャージを獲りたかったのですが、獲れずに申し訳ありません。ここにきて少しコンディションのバラつきがあった中で、全日本選手権に向けて何とかバラつきを最小限にできたとは思います。シーズン後半戦に向けて、さらにコンディションやチーム状況を立て直して戦っていきたいと思いますので、引き続き応援、よろしくお願いします」
Text:Nobumichi KOMORI/HATTRICK COMPANY
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◆[リザルト ]
[第87回全日本自転車競技選手権大会ロード・レース - ME - 213.0km - ]
1位 山本元喜 (KINAN Cycling Team) 5h46m53s
2位 佐野淳哉 (MATRIX POWERTAG) +32s
3位 新城雄大 (KINAN Cycling Team) +2m43s
4位 入部正太朗 (シマノレーシング) +4m26s
5位 平塚吉光 (Team UKYO) +4m32s
6位 小石祐馬 (Team UKYO) +4m39s
7位 中島康晴 (KINAN Cycling Team) +4m44s
8位 井上亮 (Magellan Systems Japan) +5m20s
9位 阿曽圭佑 (愛三工業レーシングチーム) +5m37s
10位 小森亮平 (愛三工業レーシングチーム) +5m37s
17位 鈴木龍 (宇都宮ブリッツェン) +7m52s
18位 小野寺玲 (宇都宮ブリッツェン) +8m34s
22位 鈴木譲 (宇都宮ブリッツェン) +10m37s
31位 雨澤毅明 (宇都宮ブリッツェン) +10m57s
DNF 岡篤志 (宇都宮ブリッツェン)
DNF 阿部嵩之 (宇都宮ブリッツェン)
DNF 飯野智行 (宇都宮ブリッツェン)
出走=118名/完走=31名
[万全を期してレース3日前の木曜日に現地入り。先着したスタッフ陣が試走の用意を進めながら選手たちを待つ]
©️Nobumichi KOMORI/HATTRICK COMPANY
[レース会場に到着した選手たちも早々に試走の準備を始める]
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[コースプロフィールを頭と身体に叩き込みながら試走を重ねる選手たち]
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[レース前夜、清水監督を中心に勝利へのプランが話し合われる]
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[レース当日、会場に到着した選手たちの間にはまだ、和やかな雰囲気が漂う]
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[レース前の3日間を費やして選手の身体をメンテナンスした細谷マッサーが大一番を前にスイッチを入れる]
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[鈴木龍選手と雨澤選手を含む昨年の上位選手を先頭に選手たちが整列する]
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[213kmのレースの幕が切って落とされた]
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[逃げ集団に入った岡選手が集団の先頭をけん引する]
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[プラン通りにメイン集団内で脚を温存しながら走る雨澤選手]
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[後方からブリッジして逃げ集団に合流した小野寺選手]
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[最終局面に向けて雨澤選手とともにメイン集団内で脚を温存する鈴木譲選手]
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[大所帯のためになかなか意思統一できない逃げ集団が逃げ続ける]
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[逃げ切りの際の勝負要員として、鈴木龍選手は逃げ集団内で脚を温存]
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[メイン集団の飯野選手は最終局面の重要な場面でWエースをきっちりアシストしたいところ]
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[シマノレーシングとブリヂストンサイクリングがコントロールするメイン集団が中間地点の牧場を進む]
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[まとまらないながらも逃げ続ける逃げ集団が下り基調のアップダウン区間を進む]
©️Nobumichi KOMORI/HATTRICK COMPANY
[なかなかペースが上がらないメイン集団はタイムアウトも迫る厳しい状況に]
©️Nobumichi KOMORI/HATTRICK COMPANY
[活性化した逃げ集団の先頭でライバルチームの攻撃に小野寺選手が対応する]
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[序盤から動き続けた岡選手が逃げ集団から遅れる]
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[ようやく活性化したメイン集団の前方で攻撃のチェックに入る鈴木譲選手]
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[想定外のレース展開をプラン通りの展開に戻したい雨澤選手がメイン集団内を走る]
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[逃げる2名を追う4名の追走集団に入った小野寺選手が懸命の走りを見せる]
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[後方の追走集団に残されることになってしまった鈴木龍選手]
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[活性化して人数が絞られたメイン集団内で鈴木譲選手と雨澤選手が前を追う]
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[懸命の走りを見せていた小野寺選手だったが追走集団から遅れてしまう]
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[最終周回に入る、3名に絞られた先頭。そこに、宇都宮ブリッツェンの姿はなかった]
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[最終局面で懸命の動きを見せたが遅れてしまった小野寺選手がフィニッシュに向かう]
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[プランと異なるレース展開を引き戻せなかった集団内で鈴木譲選手がフィニッシュする]
©️Nobumichi KOMORI/HATTRICK COMPANY
[最後に力を振り絞って前への合流を試みるも叶わなかった雨澤選手が最終完走者となった]
©️Nobumichi KOMORI/HATTRICK COMPANY
[ここ数年の全日本選手権で最も運に見放された。ここから、運をも引き寄せる強さを身につけていくしかない]
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