Live!!! 全日本選手権 男子エリート
photo(C):Tatsuya.Sakamoto/STUDIO NOUTIS
◆リザルト
[第85回全日本自転車競技選手権大会ロード・レース - ME - 154.7km - ]
1位 初山翔 (ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) 4h14m57s 36.40km/h
2位 西薗良太 (ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) st
3位 木村圭佑 (シマノレーシングチーム) +02s
4位 石橋学 (NIPPO-VINI FANTINI) +42s
5位 増田成幸 (宇都宮ブリッツェン) +43s
6位 鈴木龍 (ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) +43s
7位 野中竜馬 (キナンサイクリングチーム) +44s
8位 平井栄一 (Team UKYO) +44s
9位 土井雪広 (マトリックスパワータグ) +44s
10位 山下貴宏 (シエルヴォ奈良MIYATA-MERIDAレーシングチーム) +44s
30位 飯野智行 (宇都宮ブリッツェン) +2m27s
47位 雨澤毅明 (宇都宮ブリッツェン) +10m10s
DNF 阿部嵩之 (宇都宮ブリッツェン)
DNF 鈴木譲 (宇都宮ブリッツェン)
DNF 大久保陣 (宇都宮ブリッツェン)
DNF 堀孝明 (宇都宮ブリッツェン)
出走=125名/完走=48名
ロードレースの日本チャンピオンを決める「全日本自転車競技選手権大会ロード・レース」男子エリートが、東京都大島町の北西部に設定された1周11.9kmの公道特設周回コースで開催され、最終周回に7名に絞られた先頭集団からさらに飛び出した3名でのゴールスプリントとなり、ブリヂストンアンカーの初山選手が優勝を飾りました。今年の全日本選手権は、ブリヂストンアンカーが盤石の体制で個人タイムトライアル、ロードの2冠を達成して幕を閉じました。
宇都宮ブリッツェンは、4周回目にできた2名の逃げに鈴木譲選手が入り、その逃げが吸収された残り3周回から始まった有力チーム同士の勝負では阿部選手、雨澤選手、飯野選手がエース増田選手をサポートして集団先頭をキープ。有力選手に絞らせた終盤の勝負どころでは増田選手が孤軍奮闘の走りを見せましたが人数をそろえる他チーム有利の状況を崩すことはできず、5番手争いのゴールスプリントを先頭でフィニッシュして5位でレースを終えました。
ロードレーサーであれば誰もが一度も夢見るナショナルチャンピオンジャージ。その着用者を決める年に一度のビッグレース、全日本選手権ロード男子エリートの日が遂にやって来ました。
今年も、UCIワールドツアーチームに所属する別府史之選手(トレック・セガフレード)と新城幸也選手(ランプレ・メリダ)がそろって不出場ということもあり、昨年に引き続いて国内コンチネンタルチーム勢同士のチーム力の争いとなることが予想されます。
宇都宮ブリッツェンは初となるナショナルチャンピオンジャージ獲得という悲願成就に向け、ここ数年常に上位に入っているエース増田選手1本での勝負を選択。宇都宮ブリッツェンと同様に人数をそろえるブリヂストンアンカーや愛三工業レーシング勢の動きに注意を払いつつレースを展開し、集団の人数が絞れてきた残り2周回からさらにメンバーを絞って増田選手を有力選手同士の力勝負に送り出すプランでレースに臨みました。
大島支庁前をスタートしたレースは、直後の狭い上りのニュートラル区間を過ぎて道幅の広い上り区間でリアルスタートが切られると、激しいアタック合戦が繰り広げられる展開となります。
しかし、上り区間を終えて平坦~下り区間を過ぎると一気にペースダウン。海岸線のアップダウン区間に入ると再びアタックがかかるものの、風の影響もあってすぐに潰される状況が続きます。
集団はひとつのままの状態で1周回を完了して2周回目へ入ると、直後の狭い上り区間から再びアタックの応酬が始まり集団はペースアップ。このペースアップについていけない選手や集団後方選手が置き去りにされる展開となります。
2周回目も1周回目と同様の状態で海岸線をクリアした集団でしたが3周回目の狭い上り区間に入る段階で、小森選手(愛三工業)が集団から飛び出してペースアップ。この後に続く上り区間で先頭集団はさらに絞られる展開となります。
出入りの激しいレース展開が落ち着きを見せたのは4周回目。
各選手に疲れが見え始めた集団から中根選手(愛三工業レーシング)が単独でアタックを仕掛けると、この動きに鈴木譲選手(宇都宮ブリッツェン)が反応。そのまま数名の選手がこの動きに追随するかと思われましたが序盤のハイペースが祟ったのか後に続く選手はおらず、2名の逃げが形成されます。
鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)
中根(愛三工業レーシング)
↓ 15秒
メイン集団
有力チームの選手2名の逃げに対し、集団は人数が少ないこともあってかこの逃げを容認。一気にタイム差が広がる展開となります。
鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)
中根(愛三工業レーシング)
↓ 2分30秒
メイン集団
落ち着きを見せ始めたレースはこの後しばらく2名の逃げとメイン集団という状況のまま進みますが、5周回目に入るとメイン集団では逃げに選手を送り込んでいない有力チームの井上選手(ブリヂストンアンカー)が先頭に立って集団のコントロールを開始します。
さらに6周回目に入ると、集団先頭は井上選手(ブリヂストンアンカー)に加えて、チームメートの内間選手と椿選手も集団コントロールに加わり、レースは逃げる2名とブリヂストンアンカー勢がコントロールするメイン集団という形となります。
鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)
中根(愛三工業レーシング)
↓ 3分
メイン集団
その後、メイン集団ではブリヂストンアンカー勢のコントロールに田窪選手(マトリックスパワータグ)が加わり、一方の2名の逃げでは中根選手(愛三工業レーシング)が少しずつ厳しそうな表情を見せるなどの変化はありながらも、レースは2名の逃げとメイン集団という形のまま8周回を消化。
9周回目に入ると、ここまで協調して逃げ続けていた2名から中根選手(愛三工業レーシング)がドロップ。逃げは鈴木譲選手(宇都宮ブリッツェン)単独という状況になります。
鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)
↓ 1分25秒
メイン集団
逃げが単独になったこともあり、メイン集団に吸収されるのも時間の問題かと思われましたが、鈴木譲選手(宇都宮ブリッツェン)はその後もペースを落とさずに逃げ続け、追走のペースを上げるメイン集団とのタイム差を1分20秒前後に保ったままの状態が10周回目も続きます。
レースはそのまま、残り3周回となる11周回目に突入。
すると遂に、上り区間の中腹ほどでメイン集団が逃げ続けた鈴木譲選手(宇都宮ブリッツェン)をキャッチ。集団はひとつとなりレースは振り出しに戻って勝負どころを迎える展開となります。
ひとつになった集団では、勝負する選手を絞り込むアタック合戦が再び激化。上り区間で集団がバラけ、その後の下り~海岸線で再び集団が人数を減らしながらひとつになる状況となります。
するとここで、自分の持てる脚の限界が近づいていることを悟った阿部選手(宇都宮ブリッツェン)が、スタート/フィニッシュ地点まで残り3kmほどの海岸線から強烈な集団牽引を開始。集団をふるいにかけるとともに増田選手(宇都宮ブリッツェン)をいい位置で狭い上り区間へと送り込めるように最後の力を振り絞ります。
阿部選手(宇都宮ブリッツェン)の強烈な牽引でタテに伸びた集団は残り2周回となる12周回目に入り狭い上り区間へ。
上り区間に入ると各選手による勝負がいよいよ激化し始め、一気に集団のペースが上がる展開になり、集団が大きく割れる展開となります。
しかし、その後の下り~海岸線で集団は再びひとつに。33名の比較的大きな集団で最終周回へと突入します。
最終周回に入ると上り区間での攻防がさらに激化し、先頭は7名に絞られることに。この7名がナショナルチャンピオンジャージを着る権利を持って最終局面を迎えることとなります。
増田(宇都宮ブリッツェン)
西園、初山、鈴木(ブリヂストンアンカー)
石橋(NIPPO-VINI FANTINI)
木村(シマノレーシング)
土井(マトリックスパワータグ)
この中で、最初に仕掛けたのは木村選手(シマノレーシング)。単独でアタックを仕掛けて抜け出します。
しかし、この動きにすぐさま初山選手(ブリヂストンアンカー)が反応。さらに西園選手(ブリヂストンアンカー)、石橋選手(NIPPO-VINI FANTINI)と続き先頭は4名にまで絞られる展開となります。
海岸線を過ぎてフィニッシュに向かう上り基調の区間に入ると、4名の中から石橋選手(NIPPO-VINI FANTINI)が少し遅れ、勝負は残る3名のスプリント勝負に。
スプリント勝負ではTTチャンピオン西園選手(ブリヂストンアンカー)のアシストを受けた初山選手(ブリヂストンアンカー)が木村選手(シマノレーシング)をまったく寄せ付けずに優勝。ブリヂストンアンカーはワンツーフィニッシュを達成すると同時に、個人タイムトライアルとロードの2冠を達成する最高の形で2016年の全日本選手権を締めくくりました。
宇都宮ブリッツェンは、勝利を託された増田選手が単独という数的不利をものともせずに最終盤の7名まで残る走りを見せましたが、4名の飛び出しに反応し切れず。その後、残された選手の集団を引き上げようと孤軍奮闘しましたが集団のペースは上がらずに追いつけず。最後は5位争いのスプリント勝負の先頭を取ってフィニッシュ。5位という結果で、8度目となる全日本選手権を終えました。
清水監督コメント
「先手を取るレースをしていい形に持っていったまでは良かったのですが、最終局面で人数を残せなかった、これまでの課題を克服できなかったレースとなってしまいました。増田選手がせっかく脚を残してゴールスプリントでも頭をとっていたので、たら・ればの話にはなってしまいますが、もし万が一あのまま残ってゴールスプリントをしていたら優勝の可能性もあったと思います。レースは当初に予定していた作戦から少し違う展開となってしまい、先手を取るという部分にフォーカスして作戦をアレンジしていったのですが、それが結果的には仇となってしまった感じです。鈴木譲選手が逃げに乗らずに残っていればまた違ったかなとも思いますし、逆に鈴木譲選手が逃げに乗ったから飯野選手と雨澤選手が最終局面に残れるんじゃないかと思ったのですが、まだちょっと残れる脚がなくて厳しいレースになってしまいました。勝つためのストーリーで考えると、細かいひとつふたつのズレが勝敗から大きくズレることにつながってしまったのかなと感じています。悔しいですね、はい。今日は大島という遠方にもかかわらず現地に来てくださったファン・サポーターの皆さんの前で優勝を見せたかったという気持ちもすごくありましたし、来られずとも映像やいろいろな手段でレース情報を見てくださっていた栃木県、宇都宮のファン・サポーターの皆さんにナショナルチャンピオンジャージを持ち帰れなかったのは悔しいですし、申し訳なく思っています。ナショナルチャンピオンジャージ獲得というトライはまた来年まで伸びてしまうこととなりましたが、まだ中堅・若手選手も伸びてきていますし、引き続き変わらずトライをしていきたいと思います。ありがとうございました!」
Text:Nobumichi.Komori/HATTRICK COMPANY
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