Live!!! 全日本選手権 エリート
photo(c):Tatsuya.Sakamoto/STUDIO NOUTIS
2014/6/29(日)
第83回全日本自転車競技選手権大会ロードレース(岩手県八幡平市)
エリート男子 221.12km
1位 佐野淳哉 那須ブラーゼン 5h41m49s 38.82km/h
2位 井上和郎 ブリヂストンアンカー +10s
3位 山本元喜 VINI FANTINI-NIPPO +15s
4位 清水都貴 ブリヂストンアンカー +45s
5位 土井雪広 チーム右京 +1m02s
6位 入部正太朗 シマノレーシング +1m02s
7位 畑中勇介 シマノレーシング +1m02s
8位 増田成幸 宇都宮ブリッツェン +1m04s
9位 別府史之 TREK FACTORY RACING +1m09s
10位 早川朋宏 愛三工業レーシング +1m20s
17位 鈴木譲 宇都宮ブリッツェン +3m23s
27位 阿部嵩之 宇都宮ブリッツェン +7m51s
DNF 鈴木真理 宇都宮ブリッツェン
DNF 大久保陣 宇都宮ブリッツェン
DNF 青柳憲輝 宇都宮ブリッツェン
出走=120名/完走=39名
2014年の日本ロードチャンピオンを決める「全日本選手権ロードレースエリート男子」が、岩手県八幡平市の岩手パノラマラインコース(15.8km/周×14周回=221.2km)で開催され、1周回目終盤から2周回目にかけてできた逃げ集団に入った佐野淳哉選手(那須ブラーゼン)が、残る200km以上のレースを逃げ切って自身初となる全日本チャンピオンに輝くと同時に、創設2年目の那須ブラーゼンに全日本選手権優勝という最高の初タイトルをもたらしました。
宇都宮ブリッツェン勢は、序盤の逃げに阿部嵩之選手が乗り、中盤までは当初の予定に近い展開でレースを進めることに成功しますが、最も重要な終盤に理想通りの展開に持ち込むことができず、勝利を託されたエース増田成幸選手が8位。終盤に増田選手をアシストした鈴木譲選手が17位という結果で頂上決戦を終えています。
名誉あるナショナルチャンピオンジャージをかけた全日本選手権の中で、男子最高峰のカテゴリーとなる男子エリート。国内で活動する選手はもちろん、海外のプロチームに所属する選手もこの日のために帰国してレースに臨む、頂上決戦にふさわしいレースです。
今年は、UCIワールドツアーに出場するプロチーム、TREK FACTORY RACINGの別府史之選手が出場。2日前に行われた個人タイムトライアルで圧巻の勝利を飾ってナショナルチャンピオンジャージに袖を通した別府選手(TREK FACTORY RACING)は、2011年にも達成したロードと個人タイムトライアルの2冠を目指すことになります。
対して、個人タイムトライアルでの余力を残した上での別府選手(TREK FACTORY RACING)の優勝を目の当たりにした各チームは、「別府シフト」と言っても過言ではない“別府封じ”の策を講じて、レースに挑むことが予想されます。
宇都宮ブリッツェンも、序盤から選手を積極的に逃げ集団に乗せて逃げ切り勝利も視野に入れると同時に自分たちの脚を残しつつ、別府選手(TREK FACTORY RACING)に逃げを追わせることで脚を削り、終盤にエース増田選手で勝負という青写真を描いてレースに臨みました。
レースがスタートすると、宇都宮ブリッツェンと同様に“別府封じ”を目論むチームのアシスト陣によるアタックが1周回目から繰り広げられ、1周回終了直前の上り区間で3名の選手が先行。2周回目に入るとすぐ8名の逃げ集団が形成されます。
山本(VINI FANTINI-NIPPO)
綾部(愛三工業レーシング)
武井(Singha Infinite cycling team)
野中、木村(シマノレーシング)
井上(ブリヂストンアンカー)
佐野(那須ブラーゼン)
阿部(宇都宮ブリッツェン)
優勝候補のエースを抱える有力チームの選手が数多く入ったこの逃げ集団は、互いに協調体制をとって順調にメイン集団とのタイム差を広げていきます。
ここからさらに平塚選手(愛三工業レーシング)、山本選手(Team UKYO)、伊丹選手(ブリヂストンアンカー)も入った逃げ集団はこのコースでは珍しい11名の大所帯となり、3周回目にはメイン集団とのタイム差を5分前後にまで広げて快調に逃げ続けます。
一方のメイン集団内では、自身に張り巡らされた包囲網をかいくぐろうと別府選手(TREK FACTORY RACING)が集団先頭に立ちペースアップを図りますが、有力チームの多くが逃げに選手を送り込んでいるため協調体制を作れず、思うようにペースを上げることができません。
それでもレース中盤に入ると、逃げに選手を送り込んでいないマトリックスパワータグ勢や、逃げ選手内でのチームメートの勝利の確率が低いと判断した土井選手(Team UKYO)などが別府選手(TREK FACTORY RACING)の動きに同調し、逃げを吸収しようとメイン集団のペースアップを図ります。
8周回目に入ると、別府選手(TREK FACTORY RACING)や土井選手(Team UKYO)、清水選手(ブリヂストンアンカー)ら有力選手を含む15名ほどの追走集団が形成され、宇都宮ブリッツェンもその中に増田選手、鈴木真理選手、鈴木譲選手、大久保選手を送り込んで対応します。
程なくしてこの追走集団はメイン集団に吸収されますが、いよいよレースが大きく動き出すことが予想される展開となっていきます。
しかし、有力選手が数多く入った逃げ集団は快調に逃げ続け、集団とのタイム差は一向に縮まる気配を見せません。
9周回目に入ると、逃げに選手を送り込んでいる有力チーム勢も徐々に積極的な動きを見せ始めたことで集団はペースアップ。人数を減らしながらも、少しずつ11名の逃げ集団とのタイム差を縮めていきます。
宇都宮ブリッツェンもこの中に増田選手と鈴木譲選手が入り、当初の予定通りの展開で勝利を目指します。
レースも残り2周回となる12周回目。最後の上りをクリアしていく逃げ集団内で佐野選手(那須ブラーゼン)がパンクするアクシデント。ニュートラルを利用してすぐにレースに戻ると、ともに逃げ続けていた選手たちが佐野選手(那須ブラーゼン)を待つ姿勢を見せていたこともあり、程なくして逃げ集団に復帰。11名は変わらずに逃げ続けます。
しかし、佐野選手のパンクからの復帰を待つためにペースが落ちてしまったのか、12周回目が終了する時点で逃げ集団と追走集団との差は1分を切るところまで肉迫する展開となります。
すると、これまで11名で逃げ続けていた逃げ集団内の動きも徐々に活性化し、最終周回に入る頃には先頭は3名の選手に絞られます。
佐野(那須ブラーゼン)
井上(ブリヂストンアンカー)
山本(VINI FANTINI-NIPPO)
↓ 20秒
野中(シマノレーシング)
武井(Singha Infinite cycling team)
↓ 35秒
15名のメイン集団
15名のメイン集団は追走の手を緩めることなく逃げる3名の選手を追いかけますが、40秒程度のタイム差で最後の上りへと突入していきます。
集団が逃げる3名を飲み込むかと思われましたが届かず、勝負は3名の選手に絞られます。
その3名の争いを制し、先頭でフィニッシュラインに現れたのは佐野選手(那須ブラーゼン)。大きなガッツポーズとともにフィニッシュラインを駆け抜け、レースのほとんどを逃げ切って見事に全日本チャンピオンに輝きました。
宇都宮ブリッツェンは終盤にできた追走集団に増田選手と鈴木譲選手を送り込み、最終盤の勝負に挑むことになりましたが、逃げ続けた3名には及ばず。増田選手が8位に入るに留まりました。
清水監督コメント
「優勝した佐野選手は、本当に素晴らしい走りでした。宇都宮ブリッツェンとしては、途中まではほぼほぼ予定通りの展開でレースを進めることができましたが、最後の詰めの部分でまたしてもチームとして上手く機能できなかったかな、と感じています。他のチームも同様ですが、UCIプロチームの別府選手をマークし過ぎて躊躇してしまった部分もあったと思います。全日本選手権でシーズンのほぼ半分が終了した訳ですが、ここまでのレースを改めて振り返って、ロードレースでチームとして機能できていたかなと考えると、まだまだ課題がたくさんあると感じています。シーズン後半はロードレースでのチームの動きというものをもっと明確化して、勝利に近付ける方程式のバリエーションを増やしていきたいですし、このチーム、このメンバーでの新しい動きというものを確立していきたいと思います。シーズン当初からロードレースが得意なチームということを言ってきましたので、選手それぞれの個性を発揮することがチームのリザルトにつながる、このチームの本当の姿をお見せできるように全員で努力していきますので、引き続き応援いただけますよう、よろしくお願いします。」
text:Nobumichi.Komori/HATTRICK COMPANY
| 固定リンク